一瞬で15歳

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浜屋写真展が終わった。
濃厚な6日間は、
想像以上に
さまざまな出逢いと再会に満ちていた。




初日の大雨から一転、
2日目は
スキップしたくなるような
青空が広がっていた。

会場にも次から次に
会いたかった人たちが現れ、
私は終始はしゃいでいた。


ふと、見ると、
白髪混じりの70代くらいの男性が、
ちんまりと座っている。

いろんな人と会話しつつ、
ちょこちょこ見るが、
男性は私に視線を向けることなく、
じっと座り続けていた。

「あらら、買い物で疲れちゃって、
ここで休憩しているのかな?
誰かを待っているのかな?」

なんて思いつつ、
お客様との会話や
写真集のサインにと忙しくしていた。

三十分は過ぎた頃だったか。
その男のひとの横を通ったとき、
目があった。

「元気そうやね」

と私を見る顔に見覚えがあった。
すぐにわからず、
じっとのぞきこむ。
ん?穏やかだが、
このどこか座った目つき、
これは!?

「わ、わ、わ、
むっ、むらかみせんせいっ!!!!?
すっ、すみませ〜〜〜〜〜ん!!!」


中三のときの担任、
村上芳七だった。



一瞬にして、
昭和55年にタイムスリップ。

桜馬場中学校の制服を着た
15歳の私になっていた。



当時、中学校は荒れてるところが多く、
そんな中、桜中を立て直しに来た
という鳴り物入りでやってきたホーシチ。

噂はどうも本当だった。


教室に入ってくるなり、
酒臭さとともに、
放たれる気。
教室の空気がぴーーーーんと張る。

ヤンキーも反抗期も
そんなものはもう一瞬で飛んでいき、
クラス全体が
ものすごい緊張感に包まれていた。

なにかしでかそうものなら、
瞬く間に竹が頭上に飛んでくるのだ。

そして、その竹がある日割れたりすると、
「渕上、お前の家の裏には
竹薮があったな。
一本もってこい」
と、生徒に新品の竹を献上させる!
という
むちゃくちゃなシステムが
出来上がっていた。

自分たちが打たれるための竹を
自らが切って持ってくる
!?

なに?コメディ?

今の教育現場からすると
考えられないだろう。



母に愚痴ると、
「私、あの先生好きよ」
と一笑に付された。


ただの恐怖政治的な学級経営だったら、
恨みだけで終わっていたはずだ。


班をひとつのチームとした学級経営は、
それまで立場的に弱い子、
私のような目立たない子にも、
スポットライトを浴びせ、
活躍の場をそれぞれに持たせた。


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小児麻痺の男の子も
堂々と自分の個性を出し、
周りも一目おいていた。


ヤンキーたちは実は心根が優しい
シャイなやつが多いことも
班活動の中で知った。


怖い担任に対して、
クラスの結束、班の結束は
どんどんかたいものになっていく。


学校ってもんを

心底、楽しい!

と思えた1年だった。



一生の親友となったそっぺや保。
男女を超えた仲間も
このクラスで生まれた。

そして、なにより、
授業がわかりやすかった。
英語力もこの1年でぐんとのびた。


ホーシチとの出逢いがなかったら、
私は中学校の英語教師に
なっていただろうか。



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その血気盛んだったホーシチが、
別人のように背を丸め、
静かに私を待っててくれたのだ。


「足がこげんなってしまったけん、
なかなか外にもでらんとけど、
新聞で見たけん来たっさ。

はい、これお祝い」


柔らかな表情で
封筒を差し出す

それが
浜屋の商品券だとわかるや否や、、、


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心の中でピンと張っていた何かが、
みるみるうちにゆるんでいく。


かつては茂木中のヤンキー達を
投げ飛ばしていたというホーシチが、
足を引きずりながら、やってきた。

お祝いの封筒を渡そうと
さりげなくこちらの様子を
うかがっていたというのに、
私ときたら
ずっと気がつかないでいたのだ。
(オリツ、おめえはよ〜!)



「じゃあ、今日は帰るけど、
もう1回来るけん」

そうは言っても
この足では容易ではないだろう。


「先生、ありがとう!
うれしかった」

泣きそうになるのを
鼻の穴を膨らませ
ぐっとこらえて笑顔で見送る。


「リツコさんが生徒の顔をしてる」
操さんや木綿子ちゃんの声が
うしろから聞こえてきた。


50歳を過ぎようが、
先生の前では、
一瞬にして15歳の私になる。


人生、歳を重ねていけばいくほど、
なんだかわかったような気にもなるけど、

そんなもの一瞬で
気持ちよくひっくり返してくれる
存在がいるって
実にじつにしあわせなことだ。


会っただけで、
何者でもない、
ニュートラルな自分になれる人がいる。



教え子たちにとって、
私自身が
そうなっていけたらと思う。



浜屋商品券は
大切なお守りにしよう。




***

浜屋写真展に足を運んでくださったみなさまへ


どうもありがとうございました!

体力が持たず、在廊できなかった時間もあり、
会えなかった方々には申し訳ありません!

あたたかい言葉を残してくださった方、
予定や忙しいお仕事を抜け出し、
時間を作ってきてくださった方、
二度、三度ときてくださった方、

ひとりひとりの方に
感謝の気持ちでいっぱいです。


ハウステンボス写真展のほうにも
足を運んでくださるとうれしいです。
作品や言葉もさらに増やし、
おもろい空間にする予定です!






ハウステンボス写真展
『ひみつの花園』

場所:パレスハウステンボス 1F 2F
日程:5/19(土)〜7/2(月)


5/20(日)
11:00am ゴスペルライブ by 2.4 sungers!
1:30pm ワークショップ(満席)


5/23(水)
1:30pm ワークショップ(予約可)→詳細・お申し込み
アコーディオン奏者のLOCOさんがゲストに!


5/26(土)
11:00am ギャラリートーク with 高月晶子さん!
1:30pm ワークショップ(満席)


5/27(日)
10:30am ワークショップ(満席)


オリツ在廊予定日(6月分は後日)
5/19 20 23 24 26 27
7/2




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by 55ritsuko | 2018-05-14 11:22

RITSUKO NISHIZAWA  photographer。中学教師18年→カナダ生活6年→故郷長崎を拠点に世界を旅する。


by 55ritsuko
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