香ばしい日々

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短大を卒業し、教師になるまでの1年間、
長崎大学前のレストランでバイトしてたときのこと。




長大が目の前ということもあって、お店はいつも長大生でにぎやわっていて、
毎日が楽しくてたまらなかった。

マスターとママがおもにふたりで切り盛りしていたこのお店はファミリームード満載。
まかないというより家族の食卓といったおいしい夜ごはんを
毎夜毎夜、マスター一家とともにゆっくりと食べるのだ。
そしてバイトが終わると、「遅いから」と毎回家まで車で送ってもらっていた。
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21歳だった私は、遊びたい盛りのお年頃で、
バイトが終わって、友達が集まってるところへ直行したいといっても、
マスターは頑として、自宅まで送り届けてくれるのだ。

しかたがないので、マスターの車が見えなくなると、
そのまま送ってもらった道をもどり、
夜のネオンがまたたく場所や友達のアパートへ出かける
というめんどくさいことをやっていた。
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ある朝、仲間と雑魚寝した友達のアパートを出て、
家に帰ろうとしていたら、
黄色いカバーのついたランドセルをしょったケンちゃんが前からやってくるじゃないの。
ケンちゃんとは小学1年生のマスターの息子だ。

「おお、やばい。マスターに夜遊びがばれちまうぜ」
と、とっさに電信柱に身を隠した。
酒と煙草の匂いにまみれた自分と
朝のすがすがしい空気の中、登校していくケンちゃん。
そのふたりが交錯する姿がなんともコミカルだった。
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・・・前置きが長くなった。
その店、フラワーメイトにこの間、行ってみた。
なつかしいママやマスターの顔、
そして厨房から出てきた凛々しい青年は、まぎれもなくケンちゃんだった。
すっかり成長し、跡継ぎとして店を支え、お嫁さんまでいたり。
手渡した個展のポスターにさっさとラミネート加工までしてくれて・・・

そんなたのもしいケンちゃんの姿を見ていたら、
忘れかけてたいろんなことを思い出した・・・。

何をやったらいいかわからず悶々としていた短大時代。
就活もまったくする気がおこらず、卒業後、とりあえず東京に出たものの、
満員電車に閉口して3日で長崎へ帰ったこと。

あきれた母から、「タダではうちにおかないよ」と言われ、
生まれて初めて本気で勉強し、教員採用試験を受けたこと。

この店のバイトで貯めたお金で行ったオーストラリアの一人旅。
その経験がその後の教師生活にも大きな力となったこと。
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ああ、あのときのあれは、
そのあとのこれにつながっていたんだ。
自分が小さく感じたり、葛藤を抱えていたりしても、
時が過ぎ、いつしかその輪郭がすっと見えるときがくる。

個展を通していろんな人々と再会しながら、
時が醸し出す切ない香りに酔いしれている日々である。

個展まであと10日。
ひえー、だいじょうぶなのか、おりつ!?

PS : 写真は、隠れ家的素敵なお店が集まるししとき川散策のときのもの。
   フラワーメイトの写真もいつか撮りに行こう。
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by 55ritsuko | 2010-11-10 00:06

RITSUKO NISHIZAWA  photographer。中学教師18年→カナダ生活6年→故郷長崎を拠点に世界を旅する。


by 55ritsuko
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