ハナザワハナコ

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ハタチの頃、友人のヨーコに誘われ、

長崎温泉研究会なるものに入っていた。

所属といっても、ヨーコの友達の長大生男子数名が、
自分たちで勝手に名乗りをあげた

ときおり温泉旅行にいくという集まりだ。





はじめての旅は高千穂。

メンバーは女子2人(ヨーコと私)と、

長崎大学の男子5名(私は初対面)。


途中、熊本の通潤橋に寄ると、

観光地ということで、たくさんの人でにぎわっていた。

ヨーコとふたりトイレに行き、でようとすると、

男子メンバーがひとり、少し離れたところでたたずんでいる。

どうしたかな〜?と思っていると、

私たちが歩き始めると同時に、だまって先を歩き始めた。


ああ、この人は、

私たちがはぐれてしまわないように待っていたのか!

なんとさりげない。



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その瞬間、恋してしまった。

「待ってたよ」などと言わないところにヤラレタ。

名前も知らない、一度も話したことのない、

顔もまともに見たこともないその人に。


ところが彼はとてつもないシャイなひとで、

旅の間も会話をすることはほとんどなかった。


これじゃ、なにもはじまらない!

旅から帰るなり私はすぐにアルバイトを始めた。

バイト先は、長大の真ん前にあるレストラン『フラワーメイト』。

ここなら、長大生の彼も時々寄ってくれるだろうという魂胆だ。


その不純な動機は功を奏し、彼は時々ひとりでやってくるようになった。

シャイな彼がわざわざひとりで来るってことは、

けっこう脈アリってことではないのか!?

チキンスパが食べに来てるだけじゃないはずだ。


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確信のようなものがムクムクと膨らんできたある日、

彼がポツリとつぶやいた。


「ニシザワさんって、サザエさんのハナザワさんに似てるよね」


ガラガラガラーーーーン。

そのとき持っていたたガラスのコップが

床に砕け散る効果音が頭の中で鳴り響いた。

(かろうじて持っていたが)


オリツ、ハタチの淡い恋心は、

こうやってあっけなく幕を下ろしたのであった。



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それから25年の月日が流れ、

7年前の写真展で彼に再会した。

いろんな話をしたあと、訊いてみた。


「ハナザワさんに似てるって私に言ったの憶えてる?」

「まったく憶えてないなあ」

「あれって、あなたにはまったく女を感じてませんよってことだよね。

恋する乙女に残酷なこと言ってくれたわよね、あんた」


もうあんた呼ばわりできるほど、

私もすれっからしのリッパなミドルエイジになっていた。


「えっ、ハナザワさん、おれ好きだよ」

「えっ、カオリちゃんよりも?」

「うん、カオリちゃんよりも」

「えっ!?」



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なんてこった。男はみんなカオリちゃんじゃないのか!?


「ハナザワさんって友達想いでカラッと気取ってないところが好きだな。

カオリちゃんにはまったく・・・」

「じゃあ、しずかちゃんよりも?」

「うん、しずかちゃんって、のびたさ〜ん”って

さん付けで呼んだりしてなんだかスカしてるよな。

そもそも、しずかちゃんはドラえもんのほうで、違う漫画なんだけどな・・・」


もう最後のほうは耳に入らず。

ハナザワさんが好きな男子だっているんだよね!?

男子が全部カオリちゃん狙いだと決めつけていたなんと狭量なワタクシ。

知ってれば、あと一押しふた押ししたのによ〜〜!


おっと、ゴメン、ハナザワハナコちゃん。

あなたのあっけらかんとした明るさ、私も好きだよ。



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今度、フラワーメイトに、チキンスパ食べに行こうかなっ。


 
人生はおもしろい謎解きゲームのようだにゃ〜


本日の雲仙フォトワークショップ、参加れる方は読んでてくださいませ。






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by 55ritsuko | 2017-03-20 21:21

RITSUKO NISHIZAWA  photographer。中学教師18年→カナダ生活6年→故郷長崎を拠点に世界を旅する。


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